四国をあとにしてからも、私はルーレットを回しながら、いろいろな土地を巡っていました。
もちろん、毎回うまくいくわけではありません。
地域が変われば、お客様の雰囲気も変わります。
それまで通用していた集客方法が、別の地域では思うように届かないこともあります。
ときには、自分に合ったお店を選べないこともありました。
景気の変化で、突然お客様が少なくなることもあります。
それでも私は、そんな変化さえ楽しみながら、
自分でお客様を呼ぶ力。
自分に合った環境を見極める力。
そして、環境が変わっても生きていく力。
そんなものを少しずつ身につけていきました。
今日は、その全国出張の中でも特に印象に残っている、東京で見た二つの世界についてお話ししたいと思います。
🌸 東京で働いた、二つのお店
東京では、価格帯も働き方もまったく違う二つのお店で働く機会がありました。
一つは、とてもリーズナブルな価格帯のお店。
もう一つは、いわゆる高級店と呼ばれるお店です。
同じ業界。
同じ東京。
でも、中へ入ってみると見える景色はまるで違いました。
🌸 とにかく「回転」が求められる世界
最初に働いたのは、かなり低価格帯のお店でした。
働いたのは、3日間だけ。
一人のお客様にかけられる時間は短く、とにかく次から次へと接客が続きます。
7時間ほどの出勤で、接客した人数は18人。
一人のお客様が終わったと思えば、すぐ次へ。
ゆっくり息を整える暇もほとんどありません。
お店としても、低価格で多くのお客様に利用してもらうことで成り立つ仕組みです。
そこで働く女性にも、短い時間で多くのお客様へ対応することが求められていました。
価格を強みにしている以上、
お店側にも、お客様側にも、それぞれの事情があります。
ただ、その環境の中で働きながら、私は一つ気になったことがありました。
🌸 「本当に、ここしか選べないのかな?」
そこで出会った女性たちです。
話してみると、
「もっと違う環境でも十分働けるんじゃないかな。」
そう感じる女性が何人もいました。
でも、
「私なんて、このくらいだから。」
「ここなら安心する。」
そんな言葉を聞くこともありました。
そこで初めて私は、
働く場所を選ぶとき、自分自身をどう評価しているかも大きく影響するのかもしれない
と思いました。
もちろん、高いお店で働けば偉いわけではありません。
安いお店で働くことに問題があるわけでもありません。
人それぞれ、働きやすい環境も、事情も、求めているものも違います。
そして、お店の価格がそのまま女性自身の価値になるわけでもありません。
それでも、
「私にはこれくらいしか無理。」
と最初から自分の可能性を小さく決めてしまうことと、
「もしかしたら、もう少し違う場所も選べるかもしれない。」
と考えることでは、
その先に見える選択肢が変わることがあります。
誰かが必ず、
「あなたには、もっと選択肢があるよ。」
と教えてくれるとは限りません。
だからこそ、
自分自身まで、自分の可能性を安く見積もらなくてもいい。
そんなことを、この場所で考えるようになりました。
🌸 今度は、まったく反対の世界へ
その後、私はいわゆる高級店と呼ばれるお店にも挑戦しました。
働いた期間は、約3ヶ月。
ただし――
簡単には入れませんでした。
最初の面接。
不採用。
少し準備して、もう一度。
また不採用。
それでも私は、なかなかへこたれませんでした。
「じゃあ、次は何を変えよう?」
と考えます。
そして最終的に私が頼ったのが、
特殊メイクを専門とするメイクさんでした😏
自分の見せ方を研究し、
これまで身につけた写メ日記の集客力も材料にして、
「私は、こういうことができます。」
と改めて交渉。
懲りずに挑戦を続けて、5回目。
ようやく入店することができました。
🌸 そこで見たのは、圧倒的な本気度
実際に働き始めて、まず驚いたのは接客の水準でした。
それまで私が経験してきたお店とは、求められるものがかなり違いました。
若さや親しみやすさだけではありません。
立ち居振る舞い。
言葉遣い。
相手への気遣い。
自分自身の見せ方。
「おもてなし」と呼びたくなるような接客をする女性がたくさんいました。
私はそれまで、丁寧さや一生懸命さについて評価していただくことが多く、
自分なりに、
「接客はかなり真剣にやってきた。」
という自負もありました。
でも、その場所で働く女性たちを見たとき、
「まだ、こんな世界があるんだ。」
と思いました。
🌸 強さの裏側にあったもの
許可をいただいたうえで、実際に一人のお客様として女性の接客に触れる機会もつくりました。
そこで見たのは、
美しさを磨き続ける姿。
接客を研究する姿。
自分を律して働き続ける姿。
とてもストイックな女性たちでした。
でも、話をしてみると当然ながら、ずっと「強い人」でいるわけではありません。
雑談の中でふっと見せる笑顔。
仕事を始めた理由。
密かに持っている目標。
誰にも見せない苦労。
一人ひとりに、それぞれの人生がありました。
🌸 忘れられない、一人の女性
中でも、今でも印象に残っている女性がいます。
その方は、ほかの女性とはほとんど交流せず、一人で黙々と仕事に向き合っていました。
結果も出していて、
周囲からは、
「強い人。」
そんなふうに見られていました。
でも、私の目には少し違って映りました。
確かに接客力は高い。
お客様から支持され続ける力もある。
でも、その根っこにあるものは、
器用なテクニックというより、
目の前の一人に、本気で向き合い続けること
のように感じました。
ストイックな努力。
相手を大切にしようとする気持ち。
そして、ときには自分自身を後回しにしてしまうほどの優しさ。
誰にでもおすすめできる頑張り方ではありません。
むしろ、無理をしてほしくないとも思います。
それでも、
今この瞬間を懸命に生きている、その人の姿を、
私は確かに見ていました。
🌸 値段の向こう側にいたもの
低価格帯のお店。
高級店。
働き方も。
求められることも。
お客様も。
まったく違いました。
でも、両方を経験して思ったことがあります。
価格だけでは、その女性の価値は分からない。
低価格のお店にも、
まだ自分自身が気づいていない可能性を持つ女性がいました。
高級店にも、
華やかな看板の裏側で、人知れず努力を重ねている女性がいました。
どちらにも、
それぞれの事情があって。
それぞれの目標があって。
それぞれのやり方で、一生懸命生きている一人の女性がいました。
頑張っている女性たちの姿は、少しずつ私の中に残っていきました。
自分の可能性を、もう少し信じてもいいこと。
外から見える強さだけでは、その人の本当の姿は分からないこと。
そして、
一生懸命頑張っている人の努力が、ちゃんと報われてほしいということ。
そんな小さな気持ちを胸に残しながら、
私はまた、次の土地へ向かいました。
神楽こまち

🌸 夜の道しるべの歩み
「頑張る女性が、自分を削らなくても生きていける場所を作りたい。」
そんな想いから始まった活動です。
夜の道しるべの歴史や、これから目指している未来についてはこちらからどうぞ。
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夜の道しるべの歩み
【第21話】激安店と高級店、両方で働いて見えたもの
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夜の道しるべの歩み
【第20話】鬼ヶ島で見つけた、新しい武器
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夜の道しるべの歩み
【第11話】私は、誰のために頑張りたいんだろう
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夜の道しるべの歩み
【第19話】吉備団子を持って、いざ鬼ヶ島へ
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夜の道しるべの歩み
【第17話】赤いリュックを背負って
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夜の道しるべの歩み
【第18話】次の行き先は、まさかのルーレット
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夜の道しるべの歩み
【第16話】肩の力を抜いたら、景色が変わった
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夜の道しるべの歩み
【第15話】一年間で、私に残ったもの
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夜の道しるべの歩み
【第14話】一人で進むことしか知らなかった
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夜の道しるべの歩み
【第13話】白か黒かしかなかった頃
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夜の道しるべの歩み
【第12話】突然笑えなくなった日
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夜の道しるべの歩み
【第10話】接客中に、涙が止まらなくなった日

