【第17話】赤いリュックを背負って

なんとなくの気持ちで飛び出した沖縄出張でしたが、そこで私は少しずつ元気を取り戻していきました。

暖かな日差し。

おおらかな人たち。

北海道とはまるで違う景色。

そして、そこで一つ気づいたことがあります。

私は、新しい場所や変化が大好きなんだ。

ということでした。


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目次

🌸 ずっと同じ場所にいるのが、少し苦手でした

新しい人との出会い。

初めて食べるもの。

知らなかった土地の歴史。

いつもとは違う景色。

そういうものに触れると、私は不思議なくらい元気になります。

反対に、ずっと同じ場所で、同じことを繰り返すのは少し苦手でした。

感情を置いて、淡々とルーティンをこなしていく。

もちろん、それができる人もいます。

でも私は、どうやらそういう人間ではありませんでした。

今まで何度も、

「もっと普通にできたらいいのに。」

「どうして私はこうなんだろう。」

と思いました。

周囲と少し違う自分を、直さなければいけないもののように感じていたこともあります。


🌸 「こうじゃなかったら、私じゃないもんね」

でも、沖縄で少し肩の力が抜けた頃。

過去の失敗や空回りを思い出しながら、ふと思いました。

「まあ……こうじゃなかったら、私じゃないもんね。」

ちょっとだけ、おかしくなりました。

失敗もする。

空回りもする。

感情にも振り回される。

打たれ強いわけでもない。

それでも、新しいものを見たい。

知らない世界へ行ってみたい。

途中の景色だって楽しみたい。

そんな自分を無理に別人へ変えるのではなく、

この私と、どうやって生きていこう。

初めて、そんなふうに考え始めました。


🌸 あなたにも、そんな部分はありませんか?

「なんだか自分だけ周りと違う気がする。」

「ここだけは、どうしても変えられない。」

そんな自分の気質に悩んだ経験がある人もいるかもしれません。

それは、ときには生きづらさになります。

でも同時に、それがあるからこそ、その人にしか見えない景色もあるのだと思います。

それがあるから、あなたはあなた。

そして、

それがあるから、私は私。

私は少しずつ、自分を周囲の型へ押し込めるのではなく、

自分に合った歩き方を探してみよう

と思うようになりました。

🌸 もう少しだけ、この仕事を続けてみよう

祖母を見送ったことで、私が風俗の仕事を始めた当初の大きな理由はなくなりました。

だから、このまま辞めるという選択肢もありました。

実際、私はこの仕事をずっと続けるつもりではありませんでした。

それでも当時の私は、

「もう少しだけ、お金に余裕があった方が安心かもしれない。」

と思っていました。

これから何をするのか。

どこで働くのか。

何を学ぶのか。

まだ何も決まっていません。

だからこそ、次の道へ進むための時間とお金を、もう少しだけ準備しておきたかったのです。

「あと半年くらい働いてみようかな。」

そのくらいの気持ちでした。

ただ、以前のように歯を食いしばって働くだけではなく、

せっかくなら、この半年を自分らしく楽しんでみたい。

そう思うようになっていました。

これまでずっと、

「目的のために我慢する。」

「最短距離で頑張る。」

そんな生き方ばかりしてきた私。

でも、少しくらい寄り道してもいい。

途中の景色を楽しんでもいい。

働きながら、まだ知らない世界を見てみてもいい。

そう考えたとき、私の中に一つのアイデアが浮かびました。


🌸 そして思いついたのが、「全国を回りながら働く」

そう考えたとき、真っ先に浮かんだのが、

全国を回りながら働くこと。

でした。

我ながら、なかなか極端な結論です。

でも当時の私には、とても自然でした。

新しい土地へ行く。

新しい人に会う。

知らないものを見る。

働きながら、自分の目で世の中を知っていく。

目的地だけを目指して一直線に進むのではなく、そこへ向かう途中の景色も全部見てみたい。

そんな生き方なら、自分らしく進める気がしたのです。


🌸 もうひとつ、旅に出ようと思った理由

その頃、私にはもう一つ大きな変化がありました。

祖母を見送ったことです。

長い間、私の生活には祖母の介護がありました。

人を介護するというのは、思っていた以上に時間も体力も使います。

振り返ると私は、自分の人生と祖母の人生。

二人分を一緒に生きていたような感覚でした。

だから、祖母がいなくなったあと。

突然、生活に大きな空白ができました。

守る人がいない。

帰るべき場所も、少し変わってしまった。

最初は、心にぽっかり穴が開いたようでした。

立ち直るまでには時間がかかりました。

でも少しずつ思えるようになりました。

この空いた場所に、今度は新しい景色を入れてみよう。


🌸 赤いリュックを背負って

旅に出るとき、私は一つのリュックを持っていきました。

祖母が、最後の誕生日にプレゼントしてくれた赤いリュックです。

そのリュックを背負って、

「いろんな土地のはがきと、素敵な写真を届けるね。」

そんな気持ちで北海道をあとにしました。

まだ、この先に何が待っているのかは分かりません。

どこへ行くのかも。

何を見つけるのかも。

この旅が、自分の人生をどう変えていくのかも。

何も知りませんでした。

ただ一つだけ。

私はようやく、

「誰かみたいに生きる」のではなく、「この私と生きていく」

その一歩を踏み出したのだと思います。

赤いリュックを背負って。

ここから、私の長い旅が始まりました。

神楽こまち

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