当時の私が、本当にほしかったもの

今振り返ると、当時の私が本当にほしかったものは、

ひとりで泣ける時間。

だったと思います。

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気づけば、自分の心だけが置き去りになっていた


一人のお客様の接客が終わるたびに、心には少しずつ傷や疲れが積み重なっていました。

怖かったこと。

悲しかったこと。

うまくできなかった悔しさ。

本当は少しだけ深呼吸をしたかった。

「疲れた。」

そう一言つぶやいて、気持ちを整理する時間がほしかったのです。

でも、その時間はありませんでした。


お客様をお見送りすると、お店へ電話をかけます。

返ってくるのは、

「次のお客様、続いています。」

という一言。

慌てて片付けをして、次の準備を始めます。

一方で、目の前のお客様は、

「もう少しだけ。」

「タバコを一本吸ってから帰るね。」

「まだ出たくないな。」

そんなふうに話されることもありました。

もちろん、それ自体を責めたいわけではありません。

でも、その数分が当時の私には、とても苦しかったのです。

「次のお客様を待たせてしまう。」

「急がなきゃ。」

そう思っても、私は遠回しにしか伝えられませんでした。

笑顔で話しながら、心の中では血の気が引いていくような感覚。

あの感覚は、今でも忘れられません。

現場で、誰にも言えなかった気持ち


風俗で働く女性は、お客様にも、お店にも気を遣います。

お客様には、最後まで気持ちよく過ごして帰っていただきたい。

お店には迷惑をかけたくない。

だから、自分だけが急ぎ、自分だけが我慢し、自分だけが感情を飲み込んでしまう。

そんな場面は、決して珍しいことではありません。

一人のお客様をお見送りしたら、休憩ではありません。

次のお客様を迎えるために、ケガをしそうな勢いで片付けとセッティングを始めます。

「少しだけ座ろう。」

「一口だけ水を飲もう。」

そんな余裕すらありません。

涙を流す時間も、深呼吸する時間もなく、気持ちだけを置き去りにしたまま、また笑顔で次のお客様を迎える。

その繰り返しでした。


毎回、善意も優しさも真心も、

頑張れば頑張るほど、少しずつ削られていくような感覚。

「もう疲れた。」

そう思っても、その気持ちさえ飲み込んで、また笑顔をつくる。

そんな毎日でした。

心は少しずつ石のように硬くなり、冷たく凍っていったように思います。

あの頃の私が、本当にほしかった場所


あの頃の私は、

頑張ることしか知らなかった。

休み方も。

頼り方も。

「今日はもう限界です」と伝えることも。

私は何一つ知りませんでした。


それでも私は、

「まわりの全員が敵になったとしても、自分の力で乗り越えてみせる。」

そんなことを本気で考えていました。

今思えば、とても不器用だったと思います。

もっと誰かを頼ってもよかった。

もっと弱音を吐いてもよかった。

でも、当時の私には、その方法が分かりませんでした。


だから今、夜の道しるべを運営する中で強く思います。

女性に必要なのは、「もっと頑張る方法」だけではありません。

安心して立ち止まれる場所。

泣いてもいい時間。

弱音を吐いても否定されない居場所。

「今日は疲れた。」

そう言える相手。

あの頃の私が、本当にほしかったのは、きっとそんな場所だったのだと思います。

だから私は今、その場所を少しずつでも形にしていきたい。

夜の道しるべには、そんな願いも込められています。

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神楽こまち
5年間札幌のすすきので風俗嬢をしていました。現在は東京の某会社で事務職に務めています。休日は女性のお悩み相談窓口でボランティアの相談員として活動中。
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