【第15話】一年間で、私に残ったもの

風俗嬢として働き始めて、一年。

決して、順風満帆な一年ではありませんでした。

戸惑って。

空回りして。

焦って。

何度も立ち止まりました。

それでも振り返ってみると、

この一年は、失ったものばかりではありませんでした。

私なりに、大切なものをいくつも掴んだ一年でもあったのです。

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目次

🌸 祖母と過ごした時間

まず、一番大きかったのは祖母との時間でした。

私は、祖母に残された時間がそれほど長くないことを知っていました。

だから、できるだけ一緒に過ごそうと思っていました。

祖母は昔から旅行が好きな人でした。

行ってみたい場所も、たくさんありました。

認知症の影響で、普段は会話がうまく噛み合わないことも増えていました。

それでも、新しい景色を見ると決まって笑うのです。

その笑顔を見るのが、私は好きでした。

車椅子でも楽しめる場所を探して。

移動しやすいルートを考えて。

いろんな景色を見て。

たくさん写真を撮りました。

後半になると、祖母はなぜかやたらとパーティをしたがるようになりました。

なので、

部屋の飾り付けを変えて。

着ぐるみを着て。

クラッカーを鳴らして。

歌って。

今思えば、なかなか賑やかな毎日でした。笑

でも、それも今では大切な思い出です。

🌸 一人で進めばいいと思っていた

もう一つ、この一年で大きく変わったことがあります。

それは、人とのつながりに対する考え方でした。

当時の私は、自分の人生は自分の力で切り開くものだと思っていました。

勉強して。

新しい仕事へ挑戦して。

気になる会社へ応募して。

ときには無給でも仕事を経験させてもらって。

自分で商売をしてみたり。

とにかく、

「自分が動けば、未来は変えられる。」

そう信じていました。

もちろん、その考え方に助けられた部分もあります。

でも、社会へ出たばかりの私はまだまだ未熟でした。

常識を知らずに失礼なことをしてしまったり。

自分のペースだけで突っ走ってしまったり。

今思えば、

「それはちょっと待とうか💧」

と言いたくなるような失敗も、たくさんしました。

🌸 チャンスを運んでくるのは、人だった

いろいろな人と一緒に仕事をする中で、少しずつ分かってきたことがあります。

実力を身につけることは、もちろん大切です。

できる仕事が増える。

収入が増える。

自分で選べることも増えていく。

でも、それだけでは届かない場所もありました。

新しい仕事を教えてくれるのも。

知らなかった世界を見せてくれるのも。

思いがけないチャンスを運んでくれるのも。

結局は、人でした。

会社員として働くにしても。

自分で事業をするにしても。

人とのつながりなしに、できることには限界があります。

それまで私は、

「誰にも頼らなくても、一人で進める。」

そんな気持ちが強かったのだと思います。

でも、この一年を通して少しずつ、

人と一緒に未来をつくる

という感覚を覚え始めました。

相変わらず不器用ではありましたが、

少しずつ、社会の中に自分の居場所やつながりを増やしていきました。

🌸 お金は、あまり残らなかった

では、この一年でどれくらいのお金が残ったのか。

正直、それほど多くはありませんでした。

自分自身が学ぶために使ったお金。

新しい経験をするために使ったお金。

そして、祖母との時間を大切にするために使ったお金。

稼いだお金の多くを、その一年の中で使いました。

でも、不思議と後悔はありませんでした。

手元のお金は減っても、

私の中には別のものが残っていました。

祖母との大切な思い出。

初めて知った世界。

失敗から学んだこと。

そして、人とつながる力。

目には見えないけれど、

その後の私を支えてくれるものが少しずつ増えていました。

🌸 次の一年へ

もちろん、まだまだ途中です。

この一年で選べなかったこともあります。

手に入らなかったものもあります。

それでも、自分自身は一年前とまったく同じではありませんでした。

当時の私は、新たに目標を見つけていました。

本格的に一年以上取り組んでみたい仕事。

そして、進学して学んでみたい大学。

そのためには、もう少しお金が必要でした。

「風俗の仕事も、もう少し続けることになりそうだな。」

そう思いながらも、

私はまた次の一年へ向けて歩き始めました。

現実が変わる速度は、とてもゆっくりです。

頑張っているのに、

昨日と何も変わっていないように見える日もあります。

それでも、

学んだこと。

出会った人。

積み重ねた経験。

自分の中に残ったものは、少しずつ増えていきます。

たとえ、何かを失って一度ゼロに戻ったように感じる日が来ても。

一度積み上げることができた人なら、また何度でも積み上げていける。

焦らず。

慎重に。

丁寧に。

私はまた、次の一年へ進んでいきました。

神楽こまち

🌸 夜の道しるべの歩み

「頑張る女性が、自分を削らなくても生きていける場所を作りたい。」

そんな想いから始まった活動です。

夜の道しるべの歴史や、これから目指している未来についてはこちらからどうぞ。

神楽こまち
5年間札幌のすすきので風俗嬢をしていました。現在は東京の某会社で事務職に務めています。休日は女性のお悩み相談窓口でボランティアの相談員として活動中。
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