【第14話】一人で進むことしか知らなかった

実は、風俗の仕事を始めた頃。

私はこの仕事を、3ヶ月くらいで辞めるつもりでした。

必要なお金を貯めて。

今の状況を変えて。

そこから次の道へ進む。

当時の私の頭の中では、未来への道は一本のまっすぐな線でした。

「頑張れば、前へ進める。」

「もっと頑張れば、もっと遠くまで行ける。」

そんなふうに思っていたのです。

でも現実は、そんなに綺麗には進みませんでした。

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🌸 一人で進むことは、得意でした

当時の私は、世の中の流れや周囲のペースをあまり見ていませんでした。

自分で考えて。

自分で決めて。

自分のペースで進む。

ある意味では、それが私の強みでもありました。

風俗の仕事は、一人でお客様と向き合わなければならない場面も多く、孤独になりやすい仕事です。

そんな環境では、

「周囲がどうであっても、自分は自分。」

と考えられる性格に助けられたこともありました。

周りに流されない。

納得できないことには、自分なりの境界線を持つ。

自分で考えて、生きる道を探す。

そのまっすぐさが、自分を守ってくれたことも確かです。

🌸 でも、なぜか同じ場所で止まってしまう

一方で、困ったことも起こりました。

まっすぐ進もうとすればするほど、いろいろなものにぶつかるのです。

頑張っている。

努力もしている。

それなのに、なぜか空回りする。

3ヶ月で辞めるつもりだった風俗の仕事も、予定を過ぎて続けていました。

現実は、思っていたほど簡単には変わりません。

私は焦りました。

そして頑固な私は、

「まだ努力が足りないんだ。」

と思いました。

だから、さらに力を入れる。

さらに頑張る。

さらにまっすぐ進もうとする。

……そして、またぶつかる。

そんなことを繰り返していました。

仕事も。

経験も。

社会人としての実績も。

一生懸命積み上げているはずなのに、

あるところまで行くと、ポキッと折れてしまう。

そしてまた、ゼロからやり直す。

「何がいけないんだろう。」

「努力の仕方が間違っているのかな。」

考えても、なかなか答えが見つかりませんでした。

今思えば私は、

とても真面目に、そして頑なに、空回りしていたのだと思います。

🌸 「今回もダメなのかな」

そんな私に、少しだけ変わるきっかけが訪れます。

それは、昼の仕事での出来事でした。

面接や交渉を重ねて、ようやく入ることができた会社。

せっかくいただいた機会だから、きちんと貢献したい。

新しい仕事もできるようになりたい。

自分で勉強して、成果も出そうとしました。

最初は順調でした。

少しずつできることも増えて、成果も伸びていきます。

でも、またです。

あるところから先へ進めなくなりました。

頑張っているはずなのに、仕事の幅が広がらない。

新しいチャンスにもつながらない。

「……また今回もダメなのかな。」

あれだけ頑張ったのに。

またゼロからやり直すのかな。

力が抜けてしまいました。

涙が出そうになるのをこらえて上を向き、

「ああ、今日はアレルギーでちょっと目がしみるなぁ。」

と、何事もないような顔をしていました。

そして、

「また次の場所を探そうかな。」

辞表を出すことまで考え始めていました。

🌸 「あともう一歩だね」

そんなときでした。

普段から周囲をよく見ていたリーダーの方が、私の様子に気づいたのか、声をかけてくれました。

「〇〇さん、このプロジェクトやらない?」

チームで取り組む、新しいプロジェクトへの誘いでした。

そして、

「〇〇さんは、必要な土台はちゃんと揃ってると思う。」

「でも、あともう一歩だね。」

「このプロジェクトをやったら、その“もう一歩”に気づけるんじゃないかな😊」

そんなことを言ってくれました。

正直、戸惑いました。

参加してみると、周りにいるのは自分よりずっと年上の、経験豊富な人たちばかり。

当時の私から見ると、

「こっちもラスボス。」

「あっちもラスボス。」

「……ラスボスしかいない😐」

そんな状態でした。

でも、

「もう、この際どうにでもなれ。」

そう思って、その中へ飛び込んでみることにしました。

🌸 足りなかったのは、努力ではなかった

そこで仕事をするうちに、少しずつリーダーの言葉の意味が分かるようになりました。

私に足りなかったのは、

もっと頑張ることでも。

もっと勉強することでも。

もっと一人で強くなることでもありませんでした。

周囲を見て、人と一緒に進むこと。

それを私は、ほとんど知りませんでした。

それまでの私は、完全に個人プレーでした。

人生は自分の実力で切り開くもの。

仕事は自分の努力で広げるもの。

誰にも頼らず進めることが、強さだと思っていました。

でも、実際の社会は違いました。

自分一人のペースだけでは動きません。

相手にも考えがあります。

組織にも流れがあります。

世の中にもタイミングがあります。

それらを見ながら、

少し待ったり。

少し頼ったり。

相手に合わせたり。

自分の意見を伝えたり。

ときには誰かと一緒に進んでいく。

私は、そういう柔らかい進み方をほとんど知らなかったのです。

🌸 今いる場所にも、誰かの「Yes」があった

そして、もう一つ気づいたことがあります。

そもそも私は、本当に一人でここまで来たのだろうか。

仕事を始められたのも、

誰かが、

「この人と働いてみよう。」

とYesを出してくれたから。

知らなかったことを覚えられたのも、教えてくれた人がいたから。

新しい仕事を知ったのも、誰かとの出会いがあったから。

気づいていなかっただけで、

私は最初から、たくさんの人とのつながりの中で生きていました。

仕事も。

チャンスも。

知らなかった世界も。

その多くを運んできてくれたのは、人でした。

🌸 一人で進むことも、人と歩くことも

だからといって、

「自分の軸を捨てて、周りに合わせればいい。」

ということではありません。

一人で考える力も。

周囲に流されないことも。

自分の境界線を守ることも。

今でも大切だと思っています。

ただ、

自分の足で立ちながら、誰かと一緒に歩くこともできる。

そのことを私は、少しずつ知り始めました。

頼ること。

相談すること。

相手のペースを見ること。

人との関係を育てること。

どれも当時の私には難しく、相変わらず失敗ばかりでした。

それでも、

一人でまっすぐ進むことしか知らなかった頃より、

私の世界は少しずつ広がっていきました。

もし、

「自分のいる世界が、なぜかずっと閉じている気がする。」

「状況を変えたくて頑張っているのに、いつも同じところで止まってしまう。」

そんなふうに感じることがあるなら。

もしかすると、必要なのは「もっと頑張ること」だけではないのかもしれません。

自分の軸を持ったまま、

ほんの少し周りを見てみる。

誰かを頼ってみる。

一緒に歩いてみる。

私にとっては、それが、

一人で生きる世界から、人と生きる世界へ踏み出した最初の一歩でした。

🌸 夜の道しるべの歩み

「頑張る女性が、自分を削らなくても生きていける場所を作りたい。」

そんな想いから始まった活動です。

夜の道しるべの歴史や、これから目指している未来についてはこちらからどうぞ。

神楽こまち
5年間札幌のすすきので風俗嬢をしていました。現在は東京の某会社で事務職に務めています。休日は女性のお悩み相談窓口でボランティアの相談員として活動中。
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