祖母の介護費用や家計を支えるために働いていた、あの頃。
当時の私は、自分からあえて厳しい労働環境を選んでいました。
職場によっては、アルバイトが入れる時間が短かったり、希望しても十分にシフトへ入れなかったりします。
休憩時間も、当時の私には大きな問題でした。
その場所には拘束されている。
でも、その時間のお給料は入らない。
たった1時間。
けれど、生活に余裕がなかった私にとって、その1時間も死活問題でした。
だから、
休憩を取らずに長時間働けるところ。
人手不足で、たくさんシフトに入れるところ。
そんな職場を自分から探していました。
今なら、決しておすすめできる働き方ではありません。
でも当時の私には、
「まず生きる」
ということが何よりも優先でした。
🌸 生きているから
私は両親を自死で亡くしています。
そして私は、生きていました。
生きている人には、ときに綺麗事だけでは乗り越えられない瞬間があります。
本当は納得できない環境でも。
冷たい言葉をかけられても。
誰かから「もうやめなよ」と言われても。
それでも、今日を生きるために歯を食いしばらなければならないことがあります。
当時の私も、そうでした。
「あと一日、頑張ろう。」
「できることをしよう。」
「いつか幸せになりたい。」
「祖母にも、もっと快適な環境を用意したい。」
そんな希望だけは手放さずにいました。
たとえ、この先に行き止まりが待っているかもしれなくても。
できるところまでは、最後までやってみよう。
そう思っていました。
🌸 頑張るだけでは、変えられない現実
けれど現実は、想いや努力だけで変わるほど単純ではありませんでした。
私は、頑張ってもなかなか抜け出せない構造の中にいました。
当初は親戚から、
「あなたが20歳になるまでの一年くらいは、祖母の介護をこちらでするよ。」
と言ってもらっていました。
だから、その一年間を働く時間に充てるつもりでした。
ところが予定は早まり、半年ほどで再び私が祖母の介護を担うことになりました。
当然、働ける時間は大きく減ります。
一方で、どれだけ一生懸命働いても、時給は830円のまま。
いろいろな機関や周囲の人にも相談しました。
それでも、当時の私には状況を大きく変えられる方法を見つけることができませんでした。
貯金は少しずつ減っていきます。
もっと収入の良い仕事を目指したい。
何かスキルを身につけたい。
でも、そのための時間も体力も残っていない。
時間も、体力も、これからの可能性も、少しずつ目減りしていく。
そんな感覚でした。
🌸 そして、自分の身体まで
そんな中、追い打ちをかけるような出来事が起こります。
体調不良が続き、病院を受診すると、
「すぐに入院が必要です。」
と言われました。
内臓を患い、長期間の治療が必要になっていたのです。
でも当時の私が真っ先に考えたのは、自分の身体ではありませんでした。
「今ここで入院したら、祖母をどうするの?」
「働けなくなったら、お金はどうする?」
「そもそも治療費をどうやって払うの?」
入院を受け入れる余裕すら、私にはありませんでした。
そこでようやく認めざるを得なくなりました。
「このままでは、私も祖母も行き止まりになる。」
頑張り方を変えなければいけない。
今の状況そのものを変えなければいけない。
🌸 初めて現実になった「風俗」という選択肢
そこで浮かんだのが、夜の仕事でした。
ただ、夜は祖母を一人にできません。
働ける時間。
必要なお金。
今の自分でも選べる仕事。
一つひとつ考えていくと、
「風俗か……。」
それまで自分とは交わることがないと思っていた世界が、突然、現実的な選択肢として目の前に現れました。
求人広告を見ました。
一日働けば、これまで何日もかけて稼いでいた金額に届く可能性がある。
このお金があれば、
祖母にもう少し美味しいご飯を食べてもらえる。
新しい靴も買える。
毎月の家賃に追われる生活も、少し変えられるかもしれない。
頭では、
「もう、この道を選ぶしかない。」
と分かっていました。
🌸 分かっているのに、足が動かない
でも、人の心はそんなに簡単ではありませんでした。
そもそも繁華街へ入ることから怖い。
勇気を出して風俗店の面接を受ける。
でも、直前になると怖くなって辞退する。
また生活が苦しくなって、
「今度こそ行かなきゃ。」
と思う。
そして、また怖くなる。
その繰り返しでした。
「このままじゃいけない。」
「早く何とかしないと、私が倒れる。」
「祖母のためにも行かなきゃ。」
全部、分かっています。
分かっているのに、
足が前へ進まないのです。
夜の世界へ入るまでには、私にもそんな葛藤の時間がありました。
🌸 私も、何も知らない一人でした
今、夜の道しるべを運営していると、さまざまな事情を抱えた女性と出会います。
この世界へ入る理由は、一人ひとり違います。
それでも、
「もう時間がない。」
「この選択肢を逃したら、本当にどうにもならないかもしれない。」
そんな切迫した気持ちの中で、扉を叩く女性もいます。
余裕がないときほど、人は十分に調べたり、立ち止まって考えたりすることが難しくなります。
だからこそ私は今、
あの頃の自分が知りたかったことを、少しでも届けられる場所をつくりたいと思っています。
でも、この頃の私はまだ何も知りませんでした。
お店のことも。
働き方も。
自分を守る方法も。
ただ、
「生きるために、この状況を変えなければ。」
その気持ちだけを持って、
何度も迷いながら、夜の世界の入口に立っていました。
神楽こまち

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🌸 夜の道しるべの歩み
「頑張る女性が、自分を削らなくても生きていける場所を作りたい。」
そんな想いから始まった活動です。
夜の道しるべの歴史や、これから目指している未来についてはこちらからどうぞ。
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夜の道しるべの歩み
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