祖母の介護と家計を支えるために、必死に働いていた私。
でも、身体は少しずつ限界へ近づいていました。
明らかに体力が落ちて、以前のように動けなくなっていく。
「早くなんとかしなきゃ。」
「このままでは、私も祖母も守れない。」
頭では分かっていました。
それでも、風俗店へ入る勇気は出ない。
面接へ行っては怖くなって辞退して。
また生活が苦しくなって。
時間だけが過ぎていきました。
そしてある日。
私はとうとう倒れました。
🌸 気づいたら、病室のベッドの上
気がついたときには、病院のベッドの上にいました。
手術を受けることになりました。
当時働いていた職場は、決して温かい環境とは言えませんでした。
それでも、親切にしてくれた人は確かにいました。
特に仲良くしてくれていたのは、私の母親と同じくらいの年齢の女性でした。
私が倒れたとき、すぐに救急車を呼んでくれました。
そして私の事情を知っていたことから、入院している間、祖母のことまで気にかけてくれました。
今でも、感謝してもしきれません。
🌸 もう、力が残っていなかった
病室で考えていたのは、お金のことでした。
「入院していたら働けない。」
「治療費も払わなきゃいけない。」
「祖母はどうしよう。」
でも、もう考えることにも疲れていました。
それまでずっと、
「あと一日。」
「もう少しだけ。」
そうやって自分を動かしてきました。
その力さえ、とうとう残っていなかったのだと思います。
この頃の私は一時、
「もう全部終わりにしてもいいのかもしれない。」
そう考えるほど追い詰められていました。
今まであれだけ未来を信じていたのに。
あれだけ、
「大丈夫。」
と言い続けていたのに。
その未来さえ、見えなくなっていました。
🌸 ふと、外を歩きたくなった
あるとき、私は病院の外へ出ました。
何か答えがあったわけではありません。
ただ少し、外を歩きたい気分でした。
雪の中を、ぼんやり歩きました。
どこへ行きたいのかも分かりません。
この先どうしたいのかも分かりません。
ただ歩いていました。
そんなときでした。
スマートフォンに、一通のメッセージが届きました。
祖母からでした。
「いつもありがとう。」
「あなたの笑顔を見るのが、私の一番の幸せです。」
その言葉を読んだとき、
止まっていた何かが、少しだけ戻ってきたような気がしました。
🌸 私は、一人で生きていたわけじゃなかった
それまでの私は、
「誰にも迷惑をかけない。」
「私が頑張ればいい。」
「自分のことは後回しでいい。」
ずっと、そんなふうに考えていました。
自分一人で背負っているつもりでした。
でも、違いました。
倒れた私を助けてくれた人がいた。
卒業するとき、最後まで声をかけてくれた先生がいた。
離れても手紙を送り続けてくれた友人がいた。
そして、
「ありがとう。」
と言い続けてくれる祖母がいた。
今までの私には、その人たちの存在がほとんど見えていませんでした。
誰も傷つけたくないから、自分だけが我慢すればいい。
そう思っていたけれど、
私が苦しそうにしていることも。
私が自分を大切にしないことも。
大切に思ってくれている人を、傷つけることがある。
そのことを初めて考えました。
もしかしたら祖母にも、
「私のために、この子が苦労している。」
そんな罪悪感を抱かせていたのかもしれません。
だったら。
「私がちゃんと幸せそうに笑わなきゃじゃん。」
そう思いました。
🌸 あと一回分の勇気
もちろん、その瞬間にすべてが解決したわけではありません。
苦しい現実は、そのままです。
お金も必要。
病気も治さなければいけない。
祖母の生活もあります。
そして私自身も、まだ疲れ切っていました。
それでも、
あと一回だけ。
もう一度だけ。
未来のために勇気を使ってみよう。
そう思いました。
そのとき私が選んだのが、
これまで何度も怖くなって引き返していた、風俗という仕事でした。
🌸 私も幸せに。祖母も幸せに。
私が本当に望んでいたのは、
自分を犠牲にして祖母だけを幸せにすることではありませんでした。
祖母のために、自分が壊れることでもありませんでした。
私も幸せに。
祖母も幸せに。
その両方がある未来です。
まずは病気をきちんと治そう。
帰ったら、一緒に美味しいご飯を食べよう。
そして今の生活を変える方法を探そう。
私が選んだやり方は、少し強引だったかもしれません。
決して、誰にでもすすめられる道でもありません。
それでも当時の私は、
見失いかけていた自分の未来を、もう一度描き直しました。
そして、
「私とは交わることのない世界」
そう思っていた夜の世界へ、初めて足を踏み入れることになります。
それは、
未来を諦めたからではありません。
もう一度、自分も一緒に幸せになる未来を探すための一歩でした。
こまち

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🌸 夜の道しるべの歩み
「頑張る女性が、自分を削らなくても生きていける場所を作りたい。」
そんな想いから始まった活動です。
夜の道しるべの歴史や、これから目指している未来についてはこちらからどうぞ。
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夜の道しるべの歩み
【第11話】私は、誰のために頑張りたいんだろう
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【第16話】肩の力を抜いたら、景色が変わった
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【第15話】一年間で、私に残ったもの
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【第13話】白か黒かしかなかった頃
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【第10話】接客中に、涙が止まらなくなった日
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【第5話】初出勤の日「今日が人生最後かもしれない」

